Voice of CMP   
今は昔
イノテック株式会社 ソリューションビジネス統括部 木下 修
   

◆はじめに
 CMPは現在、半導体製造プロセスとして不可欠なものとなっています。装置も消耗材も随分と洗練されてきました。そこで今回は、昔話を少々披露させていただくことにしました。比較的初期の頃のCMPを振り返り、当時からCMPに携わってきた方には懐かしさを、最近のCMPから着手された方には、「そんな世界だったの?」という若干の驚きを感じていただければと思います。

◆もしかして左遷かも。。。
 私のCMPとの出会いは、もう10年以上も前になりますが、1996年の初頭でした。当時勤務していた職場は、米国のR&Dでプロセス開発を行い、日本の生産拠点にプロセスを移管して生産するという方式を取っていました。米国ではCMPへの取り組みが日本より先行しており、1994年には日本へのプロセス導入が始まっていました。全く新規に誕生したプロセスエリアですから、米国でトレーニングを受けたメンバーをコアにして、CMP工程前後のプロセス担当者の寄せ集めでグループが結成されました。私はもともとドライエッチングのプロセスエンジニアでしたが、レジストエッチバックのような平坦化プロセスを担当していた経緯から、CMPグループへの転籍となりました。初めてCMPのエリアを見たときには、「これって本当に半導体製造プロセス?!」という軽いショックを受けたことを今でも覚えています。実際にCMP装置を使い、実験を進めていくうちに、ドライエッチングでの常識は全く通用しない「すごい世界」であることが次々と判明しました。【もしかして、とんでもないとこに来ちゃったのでは。。。?】という不安がふつふつと沸いてきたものでした。

■驚きの原因■(ほんの一部です。)
(1)プロセスエリア
・何だか汚れた感じで、床にはあちこちに水たまりがある。(スミフ運用でした。)
(2)装置
・CMP装置はドライイン・ウェットアウト。(だから水たまりができる。。。)
・ウェーハカセットは手で装置に着脱。(他エリアは当然自動搬送です。。。)
・レシピ選択や処理時間調整なども手入力。(通常はレシピ転送もオートです。。。)
・搬送エラーが多く、ウェーハが良く割れる。(ウェーハ破損は大事件ですね。。。)
(3)プロセス性能
・とにかく再現性が乏しく、消耗材の変更で特性ががらっと変わってしまう。
・均一性制御はヘッドに局率をつけて対応。消耗財の物性管理も重要なファクター。
・経時変化が大きく、研磨速度が安定しにくい。
・酸化膜CMPには終点検出機構がない。などなど。。。

◆形勢逆転?
 それでも人間は環境に適応できるものです。経験則を蓄積しながら、何とかCMPという荒馬を、少しずつ乗りこなすことができるようになっていきました。当時行っていたことは、かなりの職人芸の積み重ねだったように思います。(2層研磨パッドの上下層の物性組み合わせで、研磨レートのウェーハ面内均一性を確保する。スラリーの比重管理で、使用する装置を限定する。などなど枚挙に暇がありませんでした。。。)
 皆様ご存知のように、半導体生産工場のプロセス技術部門では、イールド改善と製造コストの削減が年間テーマの柱でした。CMPの導入により、イールド改善は比較的順調に達成されました。(しかしながら何か原因不明の不良が発生すると、いつも真っ先に疑われるのはCMPでした。。。)一方製造コストは、CMPの導入により、一工程あたりの処理コストが大幅に上昇しました。(酸化膜CMPでエッチングの5−6倍。タングステンCMPではエッチングの20倍以上!)幸いなことに、CMPには数々の改善箇所があり、どこから手をつけてもコストの改善ができそうでした。(なんといっても、もとのレベルが低いところからのスタートですから。)スラリー使用量低減、パッドライフの延長、コンディショナーライフの延長など、どれもダイレクトにコスト削減にインパクトがあります。さらに、これらを達成する手段も多岐にわたり、テーマの選定には苦労しませんでした。中でも最もコスト削減効果の大きかったものは、設備技術のグループが主導で進めたスラリーのリサイクルでした。こちらの詳細は「CMP技術大系」にもご紹介させていただきましたので、ご関心をもたれた方は参照されてください。最終的には酸化膜CMP工程すべてにスラリーリサイクルが展開され、商用生産に適用されました。イールド改善とコスト削減は毎年順調に達成され、CMPグループのメンバーは、社内の業績評価でも常に良好な評価が得られました。職人芸を一般化して作業者依存をなくすような、経験則から技術への転化の取り組みが報われた思いでした。

◆終わりに
 泥臭いCMPの初期に携わった身としては、近年の装置や消耗材の進歩には目を見張るものがあります。ドライイン・ドライアウト、光学系終点検出、CLC、セルフストップスラリー等々。これらは、かつて「こんなものがあったらいいな」と思った、ドラえもんの道具が現実のものとなったようにさえ感じられます。プラナリゼーションCMP委員会が、こうしたCMP技術の進歩の一翼を担ってきたことは疑う余地がありません。
 添付写真は、当委員会幹事であります日立の山田さんと、カリフォルニアのNapa Valleyを訪れた際の写真です。(身長の低い方が私です。数年前のものですから、あまり近況写真とは言えませんが、この歳になりますと、見てくれは大して変化しませんので。。。)このようなご縁もCMPとの関わりから得られた、自分にとって貴重な体験でありましたため、今回あえて近況写真として選択させていただきました。


@@@






ページの始めへ戻る
 BACK